創業15周年を迎えるAREAの2017/2018年のブランドテーマは「GLAM」。このテーマを軸に、2017年9月より、AREA各店では独自企画や多様なブランドとのコラボレーションに取り組み、毎月様々なイベントを開催中です。
ホームページでは、スペシャル企画として連載対談「日本のインテリアの行方」をお届けします。

第四回目のゲストは、株式会社アクタスの休山昭さんです。




_MG_0241(野田)本日はよろしくお願いします。

(休山)今は株価が良くて、良い家具が売れていませんか?うちはカジュアルなものもたくさん扱っていますが、青山店や新宿店を中心に高い家具がとても売れているんです。ただ、1980年代後半にヨーロッパのハイエンドな家具や高級カーテン等がよく売れていた時代と比べると、かなり感触が違うんですよ。

(野田)興味深いですね。どう違うんですか?

(休山)野田さんは、その頃は20歳くらい?

(野田)そうですね。

(休山)僕は20代後半でしたけど、当時は物が溢れている時代で、20代の人が、何が良いかもわからずに、有名ブランドのスーツを普通に買って、高級レストランで食事をしていた。身の丈に合っていないし、それが本当に必要じゃなかったかもしれないけど、熱病みたいな感じでバブルの雰囲気に酔っていた時代でした。
今は、格差はあるかもしれないけど、一部の人は冨を手に入れて、ミニバブルのような状況。でもそういった人たちは、高い家具を買うにもすごく研究しているし詳しい。ブランドの名前で選ぶわけではなくて、ブランドの背景とか品質とかを熱心に質問して、長く大事に使えるものを吟味して買いたいという方ばかりです。納得したものだけしか買わないんですよね。

(野田)ニューリッチと呼ばれるいきなりお金を手に入れた人たちは、とりあえずブランド物や高い物を手に入れたい、という人がまだまだ多いかもしれませんが、オールドリッチの人たちは、しっかりと物を吟味して一生モノを買っています。ニューリッチの人も、だんだんとそういう傾向になってきましたね。そういう意味では、日本のインテリアの偏差値も、少しずつですが上がってきたような気がします。いいことですね。

(休山)1969年に会社を創業して、もうすぐ50年になります。アポロが有人で月面着陸したり、サザエさんのアニメが始まった年なんですけど、ちゃぶ台を家族で囲んでいた日本人が、ようやくダイニングテーブルやダイニングチェアを使って食事をし始めた時代です。その後、経済がどんどん成長して、バブルを経て今に至るまで、日本人の生活が変化していく様子を我々はずっと見続けてきたわけです。そう考えると、うちの会社も少しは日本人の住環境の向上に貢献してきたのかなと思います。

(野田)本当にメインストリームですよ。

(休山)そこまでではないですけど。でも、やっぱり日本人の生活が豊かになってきたのを感じますね。

(野田)精神的に豊かになりましたよね。インテリアショップとして、デザインだけでなく、素材や作りにも目を向けてもらえるのは嬉しいです。

(休山)バブルの時のように人に見せびらかすためではなくて、本質的に良いものを買おうとしていますよね。良い物を長く使いたいという欲求次元の高いお客様に対してプレゼンテーションするのは、誇りを感じるしやりがいがあります。

(野田)販売店としてのこだわりはあるんですか?

(休山)やっぱりありますね。ほとんどがB to Cなんですが、ヨーロッパのブランドも扱っていますから、彼らから「青山にショールームを出してよ」と言われることもあるんです。でもメーカーのメッセージを伝えるショールームと、生活者のためのショップは違います。メーカーの場合はプロユーザーも重要だし、コンセプトをいかに伝えるか?が大事かもしれないですが、アクタスはショップで、オリジナル家具とセレクトした商品をミックスさせ、お客様側の立場に立って来店した時の心地良さや時代のニーズに合わせた品揃えを追求しています。また、そこに使命があるとも思っています。

(野田)AREAの場合は全てオリジナル商品です。自社工場は持っていませんが、ファブレス型のメーカーの役割もあるので、メッセージ性は重要視していますね。時代を先取りしながら毎回テーマを設定して、AREAの精神世界を大事にしつつオリジナルアイテムを開発して、プロユーザーにも目を向けています。

_MG_0267_(野田)僕たちの場合は、AREAの世界観を出せばいいんですけど、常に新しい切り口を表現していかないといけないのは大変ではないですか?いつも感度高く、世の中に目を向けているわけですよね?

(休山)それがやりがいでもありますね。アクタスで新たなことをやろうと入ってくる人もいます。

(野田)アグレッシブですよね。本当にすごいパワーだと思います。

(休山)僕たちは最終的には商品というハードを売っているんですが、実際にお客様にはライフスタイルというソフトを提案しているんです。人々の欲求が変化していく中で、担当したお客様やそのご家族が幸せに暮らすための装置をお届けするようなイメージですね。

(野田)ハードに対するライフスタイルの融合のさせ方が上手いですよね。それをやろうとして喧嘩してしまっているようなショップもたくさんある中で、とても凄いことだと思います。

(休山)やりたいことを自分の価値観でやり抜くのは、それはそれで大変でもありますが、他に合わせる必要がないですからね。マーケティングという投資をして絞り込んだ、一定のお客様の価値観に合わせていけばいいんです。

(野田)平均値に合わせていく感じですか?

(休山)平均値ではないんです。うちのスタイルやコンセプトに共感してくれる方々に絞り込むことですね。全ての人の欲求には、残念ながら合わせることはできませんから。

(野田)僕もアクタスに憧れていましたよ。若い頃よく行くインテリアショップがいくつかあって、今はもうなくなってしまったところもありますが、アクタスは特別でした。

(休山)ありがとうございます。昔好きでよく行っていたショップって、よく考えると今でも凄く影響を受けていたりしますよね。

(野田)大学生の頃から刷り込まれています。AREAは業界ではちょっと異質な感じですけれど。

(休山)貴重な存在ですよ。家具が魅力的ですし、初めて会った時に言っていたことを実現していってるんですから。2人で会うと、普段からこういうことをけっこう真面目に話してますが、これからも良い関係で頑張っていきたいですね。

(野田)本当にそう思います。今日はどうもありがとうございました。

ゲストプロフィール
休山 昭(きゅうやま あきら)
株式会社アクタス代表取締役社長。ヨーロッパを中心とした輸入家具ならびにオリジナル家具、テキスタイル、アパレル、インテリア小物全般の販売や、物販店に併設した本格レストラン、カフェの運営なども手掛ける。「衣食住」生活にまつわるすべてのカテゴリーを総合的に提案するライフスタイルカンパニーとして、「上質で、丁寧な暮らし」を様々な形態で届けている。

写真:中村嘉昭