光源に誘われた私が顔を上げると暗闇の先に青白い顔をした私が浮かび上がった。数度瞬きをし、それがスタンドミラーだと理解した。壁に持たせるミラーではなく、自立したスタンドミラーだ。クラッシックとモダンがより高みで止揚した、としか表現できないようなデザインだと思った。ミラーと木枠の間の余白の濁った色に不思議な磁場があった。その時、背後から私を呼ぶ声がした。
そこから数歩離れた足元に配置されている大小一対のフロアライト。和紙のシェードが滔々と優しい灯りを漏らしている。屈んでよく見ると、貫で繋がった3本の柱に丸い光源が乗っているだけの簡単なプロダクトだった。しかしその簡素こそが魅力なのだろう。3本の柱にしてもそうだ。4本の方が安定するだろうに。不安定や危うさがもたらす何か。
コンクリートの階段を下り辿り着いた地下室は、暗く乾燥した畳の間だった。ぼんやりとした光源が数カ所。誘われるように近づくと雪洞提灯のようなフロアスタンドが現れた。手で触れた。木の優しい手触りがした。抑えられてはいるものの各所にオリエンタルな意匠が施されている。東洋西洋の折衷デザインなのだろうか。とても懐かしさを感じた。