連載対談「日本のインテリアの行方」

vol.3 ゲスト 宇佐見壽治(日本ベッド製造株式会社)

 

創業15周年を迎えるAREAの2017/2018年のブランドテーマは「glam」。このテーマを軸に、2017年9月より、AREA各店では独自企画や多様なブランドとのコラボレーションに取り組み、毎月様々なイベントを開催中です。
ホームページでは、スペシャル企画として連載対談「日本のインテリアの行方」をお届けします。

 

第三回目のゲストは、日本ベッド製造株式会社の宇佐見壽治さんです。
 
 
 
 

(野田)「日本のインテリアの行方」というテーマでお話を伺います。本日はよろしくお願いします。

 

(宇佐見)よろしくお願いします。難しいテーマですけれど、これからの日本ではインテリアと建物の融合が重要な要素になってくるんではないかと思っています。去年、隈研吾さんのトークセッションを聞きに行ったとき、面白かったのが「自分の作った建物に自分の作った家具を入れたい」「インテリアもエクステリアも自分のデザインにしたい」という言葉。それを聞いて嬉しかったですね。建築家が家具のデザインをする時代にやっとなったんだなと。
 
オリンピックにも、とてもわくわくしています。日本のある一流ホテルは、新しく客室の2割を和室にすると教えてくれました。別のホテルも同じで、新たに和洋室を作るそうです。この“和”というのが、日本のインテリアの新しい潮流になるんじゃないかな。ホテルのインテリアは一般の家庭にも流入しますから。

 

(野田)そうですね。オリンピックは外国人も注目する大きなイベントですし、ホテルだってどんどん増えていますね。

 

(宇佐見)ホテルを見に行く時、最近はどうやって和を取り入れているかに注目しているんですが、オリンピックを契機に、もう一度日本の和のアイデンティティに注目が集まるような気がしています。きっと日本中のホテルが、これから和をクローズアップしていくことになるんじゃないかな。

 

(宇佐見)オリンピックが、日本のインテリア業界の大きな転機になりそうですね。

 
 
 
 

(宇佐見)ただ、そういう点でいうと、ベッドは難しいんです。日本ベッドは一昨年90周年を迎えましたが、100周年を迎える頃には「老舗」と呼ばれるにふさわしい何かをしないといけない。この10年間で何をするか。そこで原点に戻って、こだわりを持っていいものを作ろうと考えました。

 

ベッドフレームについては、「男女別寝」がテーマです。快適な温度も、寝る時間も、起きる時間も、楽しむコンテンツも違うわけですから、我慢して一緒に寝る必要はないと思うんですよ(笑)。アメリカ人は夫婦は別々に寝ますが、日本でも富裕層のかたにとっては、主寝室という言葉はもう死語だそうです。ご主人と奥様の部屋は別々で、インテリアも別。

 
40年程前にドイツに複雑な形をした面白いマンションがあって、そこが男女別寝の部屋だったんです。あれをずっと日本でやりたいなと思っていて、それをテーマにして佐戸川清さんや小林幹也さんにベッドのデザインを依頼しました。

 
(野田)佐戸川さんが同じことを言っていましたよ。ある程度お年を召された夫婦は、それぞれのアイデンティティがあるんだから別に寝ればいいと。

 

(宇佐見)強いて一緒に寝るのであれば、とデザインしたのが、パートナーと上手にスペースを分けられ、音が漏れず光も入らないウイングベッド。デザイナーさんとは他にも、和のエッセンスを取り入れたベッドフレームなども作りましたけれど、ちょっと尖りすぎたかな。褒めていただいたんですが、あまり売れなくて…。やっぱり難しいです。日本では寝室は見せる部屋ではないんですね。どうせ暗くするんだからと。

 

(野田)なるほど、でも、売れるアイテムを作ることも必要なんですけれど、そうやってブランドのテーマだったり、哲学をリードしていくような作品を作ろうとする姿勢も重要だと思います。

 
 
 
 
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(宇佐見)ある方に言われて、昭和10年くらいの建物をよく見に行きます。その時代の日本の建物がとても良い。エアコンやセントラルヒーティングがあったり、網戸やアーチ型のカーテンレールがあったり。本当にびっくりしますよ。窓はカットガラスになっていて、方角によってカットの仕方が変えてある。光の入り方まで計算されているんです。

 

(野田)確かにいいですね。面白いです。まだ折れていない、粋がっている時代ですね。

 

(宇佐見)日本はもっと誇りを持っていいと思うんです。本当に素晴らしくて、一軒見に行ったら嬉しくなっちゃってね。これからのホテルが目指していくべき“和”というのは、そういった時代の建築やインテリアにヒントがあるような気がします。

 
 
 
 
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(野田)日本のアイデンティティについて考えていくと…

 

(宇佐見)やっぱり布団でしょうね。バネ入り布団とでも呼べばいいかな、布団のようなスプリング式マットレスを作ってホテルに納めたんですが、一般的なマットレスと差別化するために肩を丸くしたんです。ホテル側のこだわりも強かったですよ。

 

(野田)布団は日本の文化ですね。清潔感を大切にして、靴を脱いで生活する日本人ならではのもの。

 

(宇佐見)海外への進出についてもよく聞かれます。でも、まだまだ。実際にものを見てもらって、コストに見合わないと言われたことがありますよ。そもそもベッドは海外から来たものですから、日本製とは言ってもなかなか評価されにくいんだと思います。

 

(野田)Made in JAPANのその価値が、まだまだ認められないんですね。

 

(宇佐見)海外への途もまだ早い、となると、今、我々が近い将来について考えられるテーマはやはり「男女別寝」というところに行き着くかな。あとは、新しい世代の生活スタイルが今後どうなっていくかです。今の日本の若い人たちは、ペアローンと言って夫婦でローンを組んで高級マンションを買うそうです。バブルの頃のようなマンションが売れているそうですから、こうした世代がどのような生活をしているのかは、注目しないといけないですね。

 

(野田)今では結婚のスタイルも多様化しています。マーケティングが難しくなってきますから、これからは特注でそれぞれのリクエストに答えていくことも必要になりそうですね。

 

(宇佐見)所得の二極化も進んでいますし、我々は、ベッドフレーム以外にも、周辺家具など、それぞれの方にカスタマイズの可能性を提示することで、選択肢を増やしていこうと考えています。そうしないと生き残っていけないですから。

 

(野田)量よりも質を追求されていて、強みのあるすごく良い会社だと思いますし、とても共感できます。

 

(宇佐見)ありがとうございます。弊社でもちょうど、次のカタログを制作しているところなんですよ。誌面の写真表現にも力を入れたいなと。マットレスの表地などファブリック要素についても、女性のテキスタイルデザイナーの方に御協力いただいて、きちんとイメージが伝わるよう、刷新しました。選ぶとき、女性の意見は強いですからね。そうやって、いろいろな意見を取り入れながら、100周年に向けて動いているところです。

 

(野田)期待しています。やっぱりMade in JAPANの会社が頑張っていると、胸がスーッとするものですよ。日本ベッドさんにはAREAがスタートする時期からずっとお世話になってきたし、目をかけていただいてきましたから。
今日はどうもありがとうございました。

 

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ゲストプロフィール

宇佐見 壽治(うさみ としはる)

 
1926年に誕生した日本初のベッド製造メーカー、日本ベッド製造株式会社の代表取締役社長。日本を代表するベッドメーカーとして、高い品質と寝心地のよさ、居心地のよさを追求し続けている。帝国ホテル、ホテルオークラ、ホテルニューオータニのホテル御三家をはじめ、国内一流ホテルで日本ベッドの製品が愛用されている。

 

写真:中村嘉昭

 


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